(1)お金が貯まれば心が穢れる人間の業
あまり貧窮の苦労も努力もせず、素質だけで成功の幸運を味わい、突然に豊かな生活が出来るようになった者ほど、生活を乱して身を持ち崩し、引退後に貧窮し ていたということであり、やはり「お金だけが幸福の全てではない」こと、「幸運と幸福とは紙一重だが、全く違う」ということ、「お金を稼ぐには頭と体に汗 をかき、それを用いる心と理性を大切にせよ。濡れ手で粟のぼろ儲けを狙えば、いつかは必ず脇の下に冷や汗をかく」といえよう。
一世を風靡した名優チャーリ・チャップリンも、「人生に成功する上で大切なことは、夢と友人とサム・マネー」だとの名言を残し、筆者が常々「財貨多きは徳傷(やぶ)る」と忠告を発する所以もここにある。
(2)益々巧妙化した偽善的サービスの裏で増加する苦情やトラブル
近年、自由市場主義経済の成熟と共に、経済の先行きが見通し難くなり、株式・為替相場の変動も激しく不安定になり、それにつれリスクも多様・複雑化し増大 する傾向にあり、また景気浮上の刺激としての低金利政策を導入する国も増加しているが、これに対処する金融サービスとして、投資銀行などが最新の高度な金 融工学手法を駆使した、リスクの分散や回避、安全性と有利性の調和、売り手と買い手の双方がWin=Winだと喧伝する金融デリバティブ(派生関連)商品 への関心が高まり、マネーゲームが過熱気味ではないかと懸念されるようになった。
しかし同時に、これらに関する利用者からの苦情やトラブルも急増し、国民生活センターの調査によれば、この分類別のワースト・ランキングでは、通信販売 業、サラ金や街ヤミ金などの貸し金業、美容や整形・歯科医療、資格取得教育産業に次いで、金融商品取引を巡るものも不名誉な第5位にあり、金融ビッグバン 以降、収益力の回復に重点を置きアメリカ流の証券化を進めてきた銀行業界では、旧来の堅実経営、信用第一、顧客満足志向、社会貢献などといった伝統的経営 理念は、すっかり忘却してしまったようでさえある。
(3)さまざまな金融商品とその特性
金融機関を代表する、企業や個人にとって日常最も馴染み深い市中銀行の業務内容といえば、従来からの預金(受信)と貸付(与信)業務と、送金や振込みの為 替業務、税金や公共料金の収納などといった付随代行サービス業務、それに近年の金融自由化になって、派生商品(デリバティブ)など新種金融商品の開発が可 能となり、また規制緩和で各金融業態との相互乗り入れも可能となり、銀行の証券業化や、生・損保業務の取次ぎ代行も加わって業域が拡大・多様化し、その取 扱商品数も複雑で多種になった。
金融業の取り扱い商品を大雑把に分類すると、資産の運用商品としては、金融運営元本の払い戻しが保証されている預貯金や国債など(この中でも金利が確定し ているものと、変動金利のものがある)と、金融元本が保証されず、時勢に応じた運用の妙次第で増減し、利回りも変動する株式、債券、投資信託、外貨預金、 デリバティブなどの投機的商品、先物取引などとなる。
これら多様化した金融商品には一長一短の特性があり、単独の金融商品で、その選択の要件となる、安全性、確実性、収益性、有利性、換金容易性、売買譲渡な どの流動性、信用創造性、関連サービスなどの付加価値性、節税性、秘密性、将来性、健全性、社会公徳性などの全てを満たすものはどれ一つとしてなく、ハイ リスクはハイリターン、ローリスクはローリターン、運用拘束期間が長期な商品は高金利、短期の運用商品は低金利、本来からの銀行預貯金は、当初の元本が保 証される平行四角形の商品、掛け金を少しづつ積み立て、万一の将来に大きな保障を得る保険商品は三角形、担保付融資は貸出金利が低く、金融機関のリスク負 担が重くなる信用貸し付けは金利が高い、堅実性が高い商品は秘密性や節税性が乏しく、無記名式など秘密性のある商品は、安全性、信用創造性に欠け、安易な 貸付は、逆に取立てが厳しいなどというのが一般的な共通特性といえよう。
(4)金融取引を巡る苦情やトラブル
近年、国民生活センターに寄せられる金融取引を巡るトラブルは増加する一方であり、それも法の盲点を突くような巧妙さであるから注意を要し、金融商品取引 法や商品先物取引法なども次々と施行もされ、説明義務が厳しく問われるようになったが、どうしても法規制は後追いになりがちだ。
問題が多い項目は、金融機関側の事前説明不十分、不利な点の隠蔽と誇大な安全強調、品目としてはデリバティブ取引、一部投資家間でのインサイダー取引、 投資顧問業の委託契約違反、生・損保業の途中での条件変更や契約切り替え要求、支払い時の評価の不透明さや支払い渋り、インターネット取引に関するもの、 振り込め詐欺、強引な勧誘や押し売り、不当な高金利などである。
これを予防するには、金融機関の業務や商品の仕組みを良く理解してかかること、知らないことや自信の無いことには手を出さないこと、自己の性格や身の程 を知り、背伸びや手の広げ過ぎをしないこと、返済の裏づけなき借金までして投資をしないこと、他者の意見にも耳を貸し、信頼できる良き相談者を持つこと、 電話やインターネットの取引、営業担当者任せにせず、時には社屋にも乗り込んで事業活動の実態観察努力もし、あくまでも最終的には自己決断、自己責任で処 理すること、多様分散によるリスクの軽減策を講じること、深追いせず、機敏な早逃げも考えること、平素から情報入手や研究を怠らないこと、金利と利回りは 違うということを理解することなどに尽きよう。